■TVアニメーションシリーズ    『神のみぞ知るセカイ』      第八話『Coupling with with with with』          若木民喜 2010.5.27 ●登場キャラクター 桂木桂馬 エルシィ 桂木麻里 小坂ちひろ 児玉先生 マンドラゴン エルシイのお弁当 ●アバンタイトルが第1話   タイトル表示「冥府よりの脅威T」 □桂木家 □桂木家の玄関横 □玄関横に潜んでいるのはマンドラゴン □マンドラゴン目線で始まる   マンドラゴン舐めの画面で向こう側に児玉先生がいる。   児玉先生は足しか映っていない   サスペンス調   マンドラゴンの鼻がひくひく マンドラゴン「(匂いを嗅いでいるような・・・)ンフーンフー」   マンドラゴンの口が不気味にアップになる マンドラゴン「(吐息)シャアアアアア・・・・・シャアアア・・・・・」 麻里(OFF)「誰だー!」   麻里(姿は見えない)が窓を開けてシャワーをかける   マンドラゴンは逃げ去る   ボトっとケーキの破片が落ちる。結構大きめ。   ケーキの上にはチョコレートが乗っていて、「にーさまへ」と描いてある。 麻里(OFF)「誰だ、覗いてたのは!?」 OP ●第2話。ここはエルシイの話。メインストーリー。   タイトル表示「デビル・クッキング」 □桂木家 全景(朝)        ――に響き渡る桂馬の叫び 桂馬(OFF)「うわーー、うわわーーっ!!」 □同 リビング   “バタバタバタ”と逃げ惑う桂馬。 □同 庭   洗濯物を干している麻里。桂馬の叫びを聴いて―― 麻里 「朝から元気ねーー」 □同 リビング   壁を背に追い詰められた桂馬 桂馬 「な、なんだこりゃーー」   目の前には、蓋の中から目玉が覗き、火 星人のような8本の長い触足を伸ばし自 立した奇妙な弁当箱。   エルシィ、自信満々で エルシィ「なにって、お弁当ですよぅ!朝6時から作ってたんですよーー」   サカサカと軽快に走り回る弁当。 桂馬 「どこの世界に自走する弁当があるか!!」 エルシィ「でも、生きてるほうが、お昼まで冷めないですよ」   エルシィ、「どうぞ」と弁当箱を桂馬に差し出して エルシィ「神にーさまは特盛ですーーっ!」 桂馬 「いらん。」   ビシっと言い放つ桂馬 桂馬 「不気味なもんばっかり作りやがって! 絵描き歌のコック以下だ、お前はーー!!」   絵描き歌のコック風になって、ぷんすか怒るエルシィ。 エルシィ「うーーひどいーー。料理だけは自信あるのにーーっっ!」   「そんなもん知らん」とばかりの桂馬に   興奮して大声で言い返すエルシィ エルシィ「神にーさまは私に冷たすぎますーー。私、神様より300歳は年上なんですよーーっっ!」 桂馬 「それがなんだ。昨日ボクは一万年の時を越えたぞ。 (付け足して)ゲームで」   ジタバタするエルシィ エルシィ「あうーーうーーー」(う+濁点)   イメージ――ドラえもんやメー●ルたちの後姿――を背に、桂馬冷静に 桂馬 「普通、お前みたいな巻き込みキャラは、何か一つはすごい所があるもんだ」   桂馬、エルシィにビシっと指差して 桂馬 「だが、お前はなんにもない!!本当にアクマかお前は!!」 エルシィ「!!」(ががーん)   (回想)かのん篇・かけ魂センサーで透明になったかのんを見つけるエルシィに被って   怯むエルシィを更に追い詰める桂馬。 桂馬 「お前なんかバグ持ちゲームと一緒だ!!」   イメージ――バグるゲーム画面 桂馬 「このバグ魔ああああああああああああああああ!!」 エルシィ「!!!」   大ショックのエルシィ。   その後ろでうろうろしている弁当――― □舞島学園高校 全景 □同 教室内 (始業前)   机に突っ伏して、ポロポロ泣いているエルシィ。 エルシィ「う…う、う…。 ううう…う…」   エルシィ、机を揺すりながら エルシィ「うーーうーーうーー」   ちひろ、手にした女性雑誌からこちらを見て ちひろ「あら――。エリーどーしたのー?ごきげんななめー?」 エルシィ「にーさまがひどいんです――!」 ちひろ「(鼻で笑いながら)あんな底辺兄貴の言うことなんか気にしなくていーじゃん」   エルシィ、ちょっと反省しつつ エルシィ「そりゃ私…少し…… ほんのほんのほんの少し、ダメな所もありますけど」   エルシィ、駄々っ子のように机をドコドコ殴りながら エルシィ「でも、料理だけは自信あったんです――っ! あと、お掃除と――。でも、にーさまは認めてくれない!!」   雑誌を読み始め、興味なさげなちひろ。   エルシィ、ばったりと机に突っ伏して エルシィ「私から料理を取ったら、何が残るんですか・・・。あと、お掃除と」 ちひろ「さらっと切ないこと言うヤツだな」 エルシィ「う――」 ちひろ「よーわからんが、要するにエリーは、オタメガに料理をほめてもらいたいんだ」 エルシィ「!?」   手にした雑誌のページを繰るちひろ ちひろ「じゃ、これ作ってあげたら?」   雑誌に掲載された『いちごのショートケーキ』のページをドーんと差出すちひろ   いちごのアップがキラリ!   エルシィ、その雑誌をバっと手にとって エルシィ「こ、これは…何ですか!?」   食い入るようにページを見るエルシィ。 ちひろ「ケーキよ、ケーキ!」 エルシィ「ケーキ・・・あ…赤白ですね!!」 ちひろ「そんなステキなもの、女の子に作ってもらったら、女ひでりのオタメガなんてイチコロよ!!」   ちひろ、してやったりのVサイン   エルシィ、穴が開くほどに雑誌を見て エルシィ(M)「な、なるほど…地獄の基準で今まで考えてました・・・。こういうものが人間の人が喜ぶものだったんですね…!!」   エルシィ、雑誌を握りしめ一念発起! エルシィ「私、作ります!! この赤白を!」   ゴゴゴ――やる気に燃えるエルシィ エルシィ(M)「神様、見ててください!!  ついに地獄料理人パワーを見せちゃいます〜!!」   その後ろで、ちひろ、我関せず次の雑誌を読みながら ちひろ「あ、その本終わったら捨てといて――♪」 □同 家庭科室内   誰もいない家庭科室内。   エルシィ、箒と風呂敷包みを手に小躍り エルシィ「学校内に調理室があるなんて、人間の世界は素晴らしいです!」   ウキウキ、雑誌を広げるエルシィ。   イチゴケーキの作り方のページに被って エルシィ(OFF)「なになに、『お菓子作りは科学です。正確にレシピ通りに作りましょう』」 エルシィ「了解です!」   エルシィ、雑誌を抱きしめて、エヘン。 エルシィ「レシピがあって、シェフがいる。なんだ、人間界も地獄も同じじゃないですか!!」   レシピのページ。薄力粉80g〜等々の材料部分(原作参照)に被って エルシィ(OFF)「まず材料を計ります。砂糖を100g……」   興奮するエルシィ。 エルシィ「砂糖!!ですか!!」   エルシィ、ドンとビニール袋に入った地獄の砂糖――   もや○もんの菌よろしく、顔があったり「あ〜」とか喋ったり――を取り出して エルシィ「こちらでも砂糖を使うんですね!! 万国共通です!!」   エルシィ、ビーカーに100g分の砂糖を入れながら エルシィ「新しく買わなくてすみました!」   注がれた100gの地獄砂糖。   エルシィ、レシピを読みつつ エルシィ「次はメレンゲ!!卵と砂糖を混ぜ、泡立てる、か」     ×     ×     ×   大小様々、色とりどりも地獄卵。中には恐竜の卵?のようなものもあったり。 エルシィ「卵…なんの卵だろ…」   ある大きな卵がグラグラと揺れている… エルシィ「エリマキトサカネハンウズラか…」   バコン!! エルシィの目の前で突如、大きな卵が割れる! エルシィ「!!??」   咆哮と共に卵から孵ったマンドラゴン! マンドラゴン「ギャース!!!」   エルシィ「!!!」   口から炎を吐きながら、エルシィを襲うマンドラゴン。 逃げ惑うエルシィ。 エルシィ「きゃ――マンドラゴン!! こ、こんな珍味の卵、持ってきてたかしらー!!」   襲いくるマンドラゴン。家庭科室内を逃げるエルシィ。 □校庭の片隅の茂み   ボールに入った怪しげなメレンゲ―― エルシイ(OFF)「マンドラゴン・・・もう行ったかなぁ・・・」 エルシィ(OFF)「フフフ、メレンゲができました…ミドリドリの卵でバッチリです」   泡立て機でメレンゲを泡立てながら立ち上がるエルシイ。 エルシィ「ド…ドラゴンに追いかけられながらだから…多少、量は減ったかもしれませんが…」   ボールを眺めながら。 エルシイ「にーさまに作ってあげるケーキ・・・ドラゴンに食べられたりしたら大変!」   茂みから出ると、そこで桂馬にばったり。 エルシィ「!?」   エルシイ、びっくり。手のボールと、桂馬と見比べる。桂馬はキョトン。 エルシィ(M)「わわっ? ま、まだ早い…」   そそくさと、手にしたボールを見られまいと桂馬に背を向けるエルシィ。 桂馬 「?」 エルシィ「神にーさま…」 桂馬 「…」   妙に曰く有りげな雰囲気のエルシィ。   髪のドクロも怪しくみえて エルシィ「お待たせしました・・・。本日、遂に、にーさまは私の真の力を目の当たりにすることでしょう」   ホホホ〜とばかり、余裕で去っていくエルシィ。ただそれを見送っている桂馬。 □家庭科室 エルシィの料理・スケッチ   ここでレシピが画面で一瞬挿入される。   エルシィの指図のもと、手首たちが材料を運ぶ。 エルシィ(ガヤ)「苺はど〜した〜」 エルシィ(M)「神さま…見ててください」     ×     ×     ×   またレシピが挿入される。   土にタネをエルシイ。   そこに、「育て〜」とばかりに傘を振るエルシィ。   すると、にょきにょきと成長していく巨大苺。 エルシィ(M)「私だって…私だって…」     ×     ×     ×   原始的な焚き火でもって、火にくべられたオーブンレンジ。 エルシィ(ガヤ)「オーブンに入れて、190度焼く」 エルシィ(M)「やればできる!!」     ×     ×     ×   真剣な眼差しのエルシィ。 エルシィ(M)「この赤白に、私のアクマ生命をかける!!」     ×     ×     ×   ボン!! 完成した苺ケーキの土台。   正面には「にーさまへ、エルシイより(ドクロマーク)」というチョコレートっぽいプレート。   ケーキを手に小躍りするエルシィ。   手首たちも拍手で労う。 エルシィ「やった――! 見事にレシピ通りです――!!」   苺を手に、ちょっとドキドキのエルシィ。 エルシィ「こ…これで、イチゴを乗せてたら…イチゴを乗せたら…」     ×     ×     ×   エルシィの妄想。   ケーキを手に嬉しそうな桂馬。 桂馬 「うわ――エルシィ〜すごいや――!うまい、うまいよ――」 エルシィ「エヘヘ〜エヘヘ〜」     ×     ×     ×   妄想開けて。   苺を手に、照れてるエルシィ。 エルシィ「エヘヘ〜エヘヘ〜〜」   ―と、巨大な口にパクリと食べられる苺 エルシィ「!?」   目の前にはヨダレを垂らしたマンドラゴンが――。 エルシィ「!!!」   後ずさるエルシィに迫るマンドラゴン。 エルシィ「マンドラゴン…!! 戻ってきたの…」   ――と、エルシィの傍らに転がっている卵たちがピキピキっと動き出す。 エルシィ「!?」   バカっ、バカっ! 次々と卵が割れて、中から奇怪なモンスターたちが生物たちが孵る。 エルシィ「!!! へ…部屋で火をたいたから…卵がみんな孵っちゃった」   エルシィに迫りくるモンスターたち。   その迫力、その脅威。   青ざめるエルシイ。 エルシィ「こら――こっちに来るな――っ!わ…私のケーキはエサじゃない!!」   エルシィ、(未だ苺ののっていない)ケーキを必死に庇いながら エルシィ「みんな、出ていって――っ!!」 □舞島高校 俯瞰・全景   校舎の一角が爆発 □同 家庭科室 入口   破壊された家庭科室。   真ん中で突っ伏すエルシイ。   エグエグと泣いている。   手に持っているケーキは無惨に破壊されている。真ん中がぼっこりとえぐれている。 □場面転換・夜 □桂木家   テレビがついているリビング   リビングでエルシイと桂馬がいる。   麻里は、電話を受けている 麻里「ああ、そうですか・・・今日は中止ですか・・・」 麻里「きっとお疲れなんですよ・・・ゆっくりお休みくださいませ」   麻里、電話を切って、アッカンベーしてる。   その麻里に気づかず会話をするエルシイと桂馬。 桂馬「お前、昼間教室いなかったな」   桂馬に話しかけられて動揺する桂馬 エルシイ「え?」 桂馬「何してたんだ?」   桂馬は、なぜか、頭に包帯をしている。   その桂馬のよこにエルシイのお弁当がきちんとフタが締まった状態で置いてある   エルシイのお弁当にはよく見ると、血が付いている。が、誰も注目しない。 エルシイ「や、やだなあ、ちゃんと授業受けてましたよ!!」 エルシイ、ショートケーキの本を見ながら エルシイ(M)「今日は失敗しちゃったけど・・・」 エルシイ(M)「いつかにーさまに作ってあげるんだ・・・」 エルシイ(M)「苺のケーキ・・・」   エルシイのほんわかムードを断ち切るかのような桂馬のセリフ 桂馬「行っておくけど」 桂馬「ボクは甘いモノが大嫌いだからな」 エルシイ「え?」   エルシイ、きょとん。   ショートケーキの本、ゴミ箱に捨てられる。   エルシイ編、終わり。 ●第3話。ここから桂馬目線   タイトル表示「我思う故に理想あり」 □桂木家 全景(朝)        ――に響き渡る桂馬の叫び 桂馬(OFF)「うわーー、うわわーーっ!!」 □同 リビング   エルシイパートと全く同じカット。   桂馬に触手を巻き付けたところから始まる 桂馬(M)「ボクの優雅なゲームライフが失われて…どれだけの日々が過ぎただろう…」 エルシィ「お弁当ですよぅ!朝6時から作ってたんですよーー」   ニコッと笑ったエルシイがストップモーションになって、桂馬のモノローグ・・・ 桂馬(M)「すべての元凶はこいつ…!現実(リアル)が放った最悪の刺客!!」 桂馬 「お前なんかバグ持ちゲームと一緒だ!!」 桂馬 「このバグ魔!!」   言い放つ桂馬。   一瞬挿入される悲しそうなエルシイの顔 □学校   学校、授業中。   我関せずゲームをしながら考える桂馬。 桂馬(M)「あのバグ魔・・・いつまで居座るつもりだ・・・?」   ゲーム画面を見ながら一人ごちる桂馬 桂馬(M)「一体、どうしてこんな状況になってしまったんだ・・・」   児玉が呼ぶ声がする。桂馬は気付かない 児玉(OFF)「桂木くん」 桂馬(M)「現実のヤツ、ボクになんの恨みがある?」 桂馬(M)「ボクは極めて友好的に現実を拒絶しているというのに・・・」   児玉の口が映って、児玉の大きな声 児玉「桂木!」   桂馬、気付く 桂馬「!?」   児玉先生が黒板の前からイヤらしい笑顔 児玉「聞こえていますか〜テストを返しますよ〜」   ゲームをしながら教壇へ向かう桂馬。 児玉 「またゲームばっかりして…。いいんですか―そういうタイドで。んふ〜〜んふふ〜〜〜」   ゲームをしつつ、ケロっと言い返す桂馬。 桂馬 「大丈夫です。100%両立できてます。授業も聞いてるし、結果も問題ないはずです」   児玉の手にした桂馬の答案は100点―   児玉、その答案を見せつつブチ切れ 児玉 「100点取ってりゃいいってもんじゃねーぞ。ああ――?」   桂馬、ゲームをしたまま。 桂馬(M)「なぜ怒られるんだろう?何も問題ないじゃないか・・・」   児玉の燃える怒りの目。 児玉 「ふん。今に見てろ・・・」   怒りの児玉を意にも介さず、テストを無造作に机に放り投げ、座ろうとする桂馬 児玉(OFF)「次、桂木エルシィ」 児玉(OFF)「桂木妹ー!」   桂馬、児玉の声のトーンが大きくなったことに気付いて、児玉の方を向くと   児玉はエルシイの羽衣人形に向かって話していた。 児玉「桂木妹ー!返事はどうしたー!ああーん!」 桂馬「・・・・・」 桂馬「なんだ、あの人形は・・・」 □場面転換 □グランド横の学校前   ゲームしながら、考え事の桂馬 桂馬(M)「エルシィのやつ・・・どこ行ったんだ?なんだよ、いつも一緒にいるんじゃなかったのか?」   PFPのゲームを入れ替える時にふと、思い出す。 桂馬(過去のM)「このバグ魔!」   朝のエルシイの悲しそうな顔。 桂馬(M)「あれはあいつを責めた訳じゃないぞ」   桂馬を取り直して 桂馬「事実を言っただけだ」 エルシイ(OFF)「きゃー!」 桂馬「ん?」   桂馬、何かに気付いて地面を見ると。   砂糖が地面を転がってくる 砂糖「・・・・あ・・・・・あ・・・・」 桂馬「・・・・?」   砂糖を見ようとかがみ込んだ桂馬の上を風が駈け抜ける。   影はマンドラゴン 桂馬「うわ!」 桂馬「?」   風をいぶかしがるそぶりの桂馬。   その桂馬に聞こえてくる声 エルシィ(OFF)「フフフ、メレンゲができました…ミドリドリの卵でバッチリです」   桂馬の前をエルシイが茂みから出てくる。 エルシィ「ド…ドラゴンに追いかけられながらだから…多少、量は減ったかもしれませんが…」   ボールを眺めながら。 エルシイ「にーさまに作ってあげるケーキ・・・ドラゴンに食べられたりしたら大変!」   桂馬には全部聞こえてくる。   ここでエルシイが桂馬にやっと気づいて エルシィ「!?」   エルシイ、びっくり。手のボールと、桂馬と見比べてオロオロ。 エルシィ「わわっ? ま、まだ早い〜」   そそくさと、手にしたボールを見られまいと桂馬に背を向けるエルシィ。 桂馬 「?」 エルシィ「神にーさま…」 桂馬 「…」 エルシィ「お待たせしました・・・。本日、遂に、にーさまは私の真の力を目の当たりにすることでしょう」   ホホホ〜とばかり、余裕で去っていくエルシィ。ただそれを見送っている桂馬。 桂馬(M)「ろくなこと考えてないな・・・あれは・・・」 □グラウンド   体育の授業中。   Tシャツ姿の児玉、居丈高に 児玉 「今日は木村先生がお休みです。代わりに私が体育を見ますよ――? ん――ふっふ」   児玉、声高に生徒たちへ 児玉 「とりあえず走れ!!グラウンド20周」   しぶしぶとグラウンドを走り出す生徒たち(その中には桂馬もいる)。 生徒たち「ゲー今日バスケじゃねーの?」 生徒たち「なんであいつが体育見てんのさ―」     ×     ×     ×   走る生徒たちを意地悪くみている児玉。   その中のある生徒に気づく 児玉 「?」   ぜぇぜぇ言いながら、よろよろと走るジャージを着た桂馬の姿だ。 桂馬 「(息も絶え絶え)」   児玉、余裕の表情でよろよろ走る桂馬に後ろ走りで近づいて 児玉 「桂木く〜〜ん、ゲームばかりではいけませんねぇ〜」   余裕の児玉、桂馬をあざ笑うかのよう。 児玉 「どうですか――ビリの人はさらに20周追加ですよ――」   児玉、桂馬に顔を寄せて、死刑宣告のように言う。 児玉「おい、桂木」 児玉「今日、家庭訪問させてもらう」 児玉「母親と一緒に待ってろ!」 児玉「何なら、停学にしてやろうか!?」   桂馬、ハアハア言いながら、聞いてるか聞いてないかのようなそぶり 児玉「まあ、お前がさっきの態度を私に謝罪すれば、今回だけは忘れてやってもいい」 児玉「ふ・・・ふっふふっふっふ!」   桂馬、ジャージの中からPFPを取り出しつつ 桂馬(M)「…さっきのこと根にもってるのか…ボ…ボクに挑戦しても……」   PFPを手に構えた途端―― 桂馬 「!」   生き返ったようにビシっとなる桂馬。 児玉 「なにィ!?」   PFPを構えた桂馬、落とし神の表情になって 桂馬(M)「ボクは落とし神!! 現実(げんじつ)の妨害なんぞ軽く呑みほしてくれる!!わーっはははははは!!」   ――が、次の瞬間、体力の限界に、思わず前のめりにバタリと倒れて… 桂馬 「(弱弱しく)わーっははは……」   倒れた桂馬をあざ笑う児玉。 児玉 「んーふっふっふ…どうだ思い知ったか!!」   ここから児玉がゆがんでくる。   桂馬にとっては現実の悪意そのもののイメージ。   うつ伏せに倒れたままの桂馬。 桂馬(M)「くそ…」   勝ち誇った児玉。 児玉 「なまいきな奴め!! お前みたいな人間は、ロクな大人になりませんよ――」   ビシっと指をさして、トドメの一撃。 児玉 「お前のような輩がゲームと現実の区別がつかなくなって、犯罪者になるんだあああ!!!」   突っ伏したままの桂馬 桂馬 「(ノーリアクション)」 児玉 「?」   ――と、桂馬突っ伏したままで言い放つ 桂馬 「ゲームと現実(リアル)を、一緒にするんじゃない!!」   桂馬、ジョーのようにフラフラと立ち上がりながら 桂馬 「ゲームはゲーム。現実は現実さ」   あんぐりと口を開けた馬鹿面の児玉。 桂馬 「なんでもゲームと結びつける人のほうが、区別できてないんだ」   桂馬、ビシっと顔をあげて 桂馬(M)「そうだ! こんなどーでもいい世界のくせにつけあがって!! 」   桂馬の心のなかで光のイメージが広がってくる。 桂馬(M)「ボクは理想の世界の住人!現実みたいな外国の人間に干渉されるいわれはない!」   ワナワナと震える児玉、 児玉 「もしも―し」   児玉、桂馬の首根っこを掴んで 児玉 「今、この私に何を……!!」   大きく右手を振り上げて、ビンタの構え――すると爆発音が聞こえてくる。 児玉 「!?」   児玉が振り返ると、   そこにマンドラゴンが。このマンドラゴン、よく見ると、右手にエルシイのケーキの破片を握っている。 児玉 「!!!!!!!!」   そこにグランドに猛烈な勢いで、化け物が通り過ぎる。   桂馬はそれを呆然と見ている。 □場面転換・夕方 □桂木家玄関の前   玄関にもうすぐ付くところの桂馬 桂馬「エルシイのヤツ・・・今日は全然姿見せなかったな・・・」 桂馬「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」   さっきのグランドの騒ぎを思い出す桂馬 桂馬(M)「あの騒ぎの元凶は・・・やっぱりあいつなんだろうな・・・」   玄関から入ろうと思うと、玄関横に何か白い固まりを見つける桂馬。 桂馬「・・・・・・・・・・・・ん?」   桂馬が近づいてみると・・・   「にーさまへ エル」と書かれたケーキが。 桂馬(M)「これ・・・あいつがなんか言ってたやつか・・・」 桂馬(M)「・・・・・・・・・」   桂馬、ケーキから離れて、家に入る。 桂馬(M)「いや、あのバグ魔のやることだ・・・どうせロクなもんじゃない」 桂馬(M)「関わらないが吉だ・・・」 桂馬(M)「現実め・・・来るなら来い」 桂馬(M)「ボクはいかなる現実にも負けはしないぞ!」   その時PFPからアラームがなる。 桂馬「あ〜!!時限イベントだ〜!!」   桂馬アホ顔でウキウキ。   桂馬、バタバタと家に入っていく。   桂馬編。終了。 ●ここから麻里目線 ●ここはストーリーというよりも麻里さんの身体を楽しむのがメインテーマ。   タイトル表示「ある母親の日常」 □桂木家   カフェは「本日定休日」の看板。   麻里、姉さんかぶりして電話中。 麻里「はい・・・本当に申し訳ありません・・・」 麻里「でも、あの子は決して悪気がある訳ではありませんので・・・」 麻里「え、今日の5時過ぎに・・・わかりました・・・はい、お待ちしております」   麻里、電話を切る。   切った途端に豹変。 麻里「うるせーってんだよ!」 麻里「なんだ、この児玉ってやろーは!うちの息子にインネンばかりつけやがって!」 麻里「来たらヤキ入れてやる!」   元気がなくなって 麻里「って訳には行かないよねぇ・・・あ〜あ」   麻里話しながら、外に出てくる。   外にはバイクがある。カワサキ   バイク掃除の途中だった模様。   軍手やバケツなどが回りにおいてある。 麻里「すっかりやる気なくなっちゃったよ」   バイク眺めて   頭の中にバイクのエキゾーストノートが聞こえてくる 麻里(M)「こいつにも最近乗ってないな〜」   麻里、バイクに話しかける 麻里「おい、元気か?!」   バケツを持って家に戻ってくる 麻里「ふぅ」   ぱっと見ると、手が汚れている 麻里「このまま会うって訳にもいかないか・・・」 □お風呂   麻里、お風呂に浸かりながら考える 麻里「桂馬の根は良いヤツなのよね〜」 麻里「でも、根から上は悪いのよね〜」 麻里「あの子・・・子供の頃からちょっととヘンだったし・・・」 麻里(OFF)「停学だー!とか言われちゃったらどうしよう・・・」   麻里、ふと、我に返って。 麻里「ま、いいか、私もロクな子供じゃなかったし!」 麻里「私がお母さんか〜信じられないな・・・」   麻里、う〜んと考える   その時、窓の外に変な雰囲気   アングルが窓の外に切り替わる 麻里「もう、やんちゃしてる場合じゃないわね」   麻里、何かに気付く 麻里「誰だー!」   麻里が窓を開けてシャワーをかける   マンドラゴンが逃げ去る音 麻里「誰だ、覗いてたのはー!?」   麻里、やんちゃモードになってバスタオルだけで風呂場から飛び出す   その時、廊下から玄関にカサカサと何かが通り過ぎる音がする   これは実はお弁当だが、見ている人には影の形でわかる。 麻里「!」 麻里(M)「や、やだ、中に入ってきたの?」   麻里(M)「ど、泥棒?」   ここからサスペンス調。   視聴者的にはマンドラゴン入ってきたと思って欲しい。   うっすらと音が聞こえてくる。 麻里「だ、誰?」   影がビクっとなって、ささっと逃げていく。   麻里は相変わらずバスタオル一丁 麻里「・・・・・・・・・・・」 麻里「かよわい元暴走族の女のところに泥棒なんて・・・」   そう言いながら、花瓶から花を抜いて武装する麻里 麻里「どうしよう・・・」 麻里「警察に言った方がいいかな・・・」   夕暮れに近づいてきて、外は明るいが、中は暗い逆光状態。   音を辿っていく麻里。 麻里「・・・・・・・・・・・」   音の元は、カフェからしている。   カフェの半開きの扉から中をそっと覗く麻里   音がカウンターの中からしている 麻里(M)「店の金を狙ってるの・・・?」   侵入者はカウンターの内側のスミでもぞもぞ動いている 麻里(M)「舐めるなよ・・・!」 麻里(M)「・・・私は・・・昔より、遙かに強いのよ!」 麻里(M)「パパもいない家を、私は一人で守っているんだから!」 麻里(M)「母の強さを知れー!」    ドアを開けて飛び出す麻里    侵入者に向かって、渾身の一撃    木っ端みじんになる花瓶。    悲鳴をあげて倒れる侵入者。 麻里「!?」    ここで麻里は初めて侵入者の顔を見る。    それは桂馬であった。 麻里「け、桂馬〜!?」 麻里「桂馬〜!しっかりして〜」 麻里「どうして私が聞いた時に返事しないのよ〜!」    頭から血を流す桂馬の傍らにはお皿が置いてある。    そこにはエルシイの作ったケーキの残骸。    桂馬はエルシイのケーキを食べてあげていた模様。    桂馬の口のはたにクリームがついている。    その時、家の呼び鈴がなる。    ピポーン・・・・・ 麻里「桂馬〜ごめんなさーい」    ピポーン・・・・    誰も呼び鈴に応えないまま暗転。    麻里編、終了。 ●第5話 ●ここからエルシイのお弁当目線   タイトル表示「冥府よりの脅威U」 □桂木家   冒頭のマンドラゴンと少し離れた場所。カフェの辺り?   お弁当は見えない。マンドラゴンは見えない   お弁当目線ではある。 麻里(OFF)「誰だー!」   シャワーをかける音だけ聞こえてくる。   しばらく待つとマンドラゴンが濡れながら現れる。 マンドラゴン「うご・・・うごご・・・・・」   マンドラゴンはまだ気づかない マンドラゴン「・・・・・・・?!」   マンドラゴン、ようやく気配に気付く・・・・・。   ここら編で麻里編で鳴っていたピンポーンがなる   ピンポーンの音に合わせて徐々にお弁当にカメラが。   お弁当がマンドラゴンの前に仁王立ち。   マンドラゴンに狼狽の気配   しかし、お弁当の触手がマンドラゴンに巻き付く   庭中に響き渡る捕食音 お弁当(OFF)「むしゃぐちゃぐぎゃげっぎゃ」   マンドラゴンが食べられているようすは映らない。   が・・・桂木家の前で見ていた人間がいた   青ざめた児玉がそこにいた。ピンポーンが児玉が鳴らしていた。   暗転 お弁当(OFF)「ゲップ」 (本編終わり) ●予告も次回予告はやめて、「砂糖」で締める。   予告      画面はイラストが実現していればイラスト。   そうでなければ、砂糖の入ったビンを大写しにして段々カメラを引いていくような感じでもOK。   砂糖「あー・・・・・」 砂糖「あー・・・・・」  あーあー言いながら砂糖が転がっていく。  砂糖が右から左へコロコロと転がり、やがて見えなくなる。  すると、左から栞がとことこ歩いてきて、右へ消える。